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19話 空間を歪ませる紫色の奔流と、辺りを包み込む激しい轟音

Author: みみっく
last update Last Updated: 2025-11-04 06:00:41

 ディアブロは暗黒の裂け目から完全に姿を現し、血のように赤い目をギラリと光らせた。周囲の空気が一層重くなり、彼の存在感が否応なしに増していく。

「我はディアブロだ、貴様が私の封印を解いたのか……」

 その声は低く、地響きのように部屋全体に響き渡った。

「我が望みを叶えてやると言ったな……その言葉に偽りはない。だが、覚えておけ、私に力を求める代償は計り知れぬものになるのだが、封印を解いてくれた礼だからな」

 ディアブロは一瞬、薄く笑みを浮かべた。その笑みは、凍てつくような冷たさを感じさせるものだった。

「未知の力を欲するとは、実に興味深い……貴様の野望、見届けさせてもらおう」

 ディアブロはゆっくりと歩み寄り、レイニーに視線を固定する。彼の歩みからは、大地を揺るがすような重圧が放たれている。

「さあ、力を受け取るがいい。だが、その力が何をもたらすかは貴様次第だ……」

 ディアブロの言葉には、かすかな脅威とともに、彼自身に強大な力が滾っていくような強い殺意が込められているのを感じた。

 悪魔がニヤリと不敵に笑うと、手のひらを上に向けて差し出した。その手のひらの上に、紫色の禍々しい球体が現れる。球体からは紫色の炎のようなものがゆらゆらと揺らめき、空間を歪ませる。

「わぁ。なにそれ……知らない未知の力だ! 興味あるあるぅー♪」

 レイニーは、その光景を興味津々に見つめ、無邪気な笑みがこぼれた。まるで珍しいおもちゃを見つけた子供のようだ。

♢ディアブロの困惑

 その瞬間、悪魔が強力な魔法を放ち、その紫色の奔流がレイニーへと一直線に命中した。辺りが紫色の炎に包まれ、激しい轟音が練習場全体に鳴り響く。魔法の衝撃で空気が振動し、地面が揺れ動くほどの途方もない力が感じられた。

「貴様の、未知なる力は教えたぞ。しっかりと見届けさせてもらった」

 ディアブロは、猛烈に燃え盛る紫色の炎を見つめながら、満足げに呟いた。紫色の炎が消え去ると、周囲には焦げた痕跡が残り、空気は重苦しい沈黙に包まれた。悪魔は、解放してくれた上に未知なる力を「教えてやった」ことで、その代償を支払わせ、完全に解放された喜びに満ちた不敵な笑みを浮かべていた。

「へぇ〜。キミって、なかなか強いんだねっ♪ 辺りが一瞬でめちゃめちゃになっちゃったねぇ〜」

 破壊され舞い上がった瓦礫の埃の中から、楽しそうな声が響いてきた。埃が晴れると、そこには傷一つなく、平然とした顔でニヤッと嬉しそうに微笑むレイニーの姿があった。

 ディアブロが放った強力な魔法をまともに食らってなお、死にもせず、「無傷だと!?」ディアブロは驚愕に目を見開いた。レイニーはディアブロの攻撃に、驚きの表情を浮かべることもなく、平然としており、笑顔で楽しそうに言った。

「ねぇ、ねぇ〜他には? もっと教えてよ! ほら、はやく、はやくぅ〜♪」

 ディアブロの魔法をまともに食らってなお、笑顔を崩さないレイニー。その光景に、悪魔はゾクッと背筋を冷たくするほどの恐怖を覚えた。

「悪魔である我に、このような恐怖を与えるとはな……」

 ディアブロは、自分自身に言い聞かせるように呟いた。長年の封印によって力が衰えていたとしても、レイニーの無傷の姿には明らかな違和感を覚える。

「それでも、これほどの魔法を受けて無傷とは……。貴様、ただの人間ではないな?」

 レイニーは微笑みを浮かべたまま、楽しそうにディアブロを見上げた。

「もう、他にはないのかなぁ……? ねぇ〜♪」

 レイニーが可愛くおねだりをするように言ってきた。

「悪魔である我に、このような屈辱と恐怖を与えるとは、さすがは封印を簡単に解除しただけのことはある。ガキよ……」

 ディアブロは、小さく呟いた。ディアブロは内心の動揺を押し隠しながら、再び冷ややかな笑みを浮かべた。彼の心には、レイニーという存在に対する新たな興味と、そして深い警戒が芽生えていた。

♢精神支配の試み

 長年封印されていたせいで魔力が多少衰えていたとはいえ、目の前の人間の子供に自分の魔法が効かなかったことに、ディアブロは理解が及ばなかった。ならば、悪魔特有のスキルである精神支配ならば、この状況を打開できるはずだと考えた。得意とする精神支配を試みることにしたのだ。うまくいけば、この少年を支配し、殺してその強大な魔力を奪い取ることができるだろうと目論んだ。

 ディアブロは、レイニーに気づかれないよう、魔力をこっそりと送り込み、慎重に行動した。

 ディアブロの手のひらから、目に見えない波動が静かに広がっていく。彼の目は鋭く光り、狙いを定めた獲物を決して逃さない鷹のようにレイニーを見つめた。精神支配の魔術は、相手の心に入り込み、意識を操る力を持っている。ディアブロはその術を巧みに使い、レイニーの意識の中にゆっくりと魔力を送り込んでいった。

(ふっ、これで終わりだな……)

 ディアブロは心の中でつぶやいた。長年封印されていたせいで魔力が多少衰えていたとはいえ、この程度のスキルであれば問題なく成功するはずだと信じていた。

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